信号機制御システムへのAI実装事例/ 膨大な映像データに基づいた交通監視ソリューション
都市の交差点では歩行者だけでなく、自転車、自動車、バスなどの様々な車両が行き交っています。交差点での信号機制御は、車両の運行に大きな影響を与え、ときには交通渋滞の原因となります。安全性を維持しながら交通の流れをスムーズに制御するシステムを実現するには、都市全体の車両の動きと流れを把握する正確な交通監視ソリューションが不可欠です。
超音波、マイクロ波レーダー、赤外線センサーなどの従来の検知方法では、設置するのにコストがかかりすぎたり、正確に信号機を制御するために必要な映像記録が収集できません。AI(人工知能)を活用した信号機の自律制御システムは、これらの課題を克服することができ、映像の解析に不可欠な交通メタデータ(データに関する属性情報を記述するデータ)を生成することができます。このシステムはエッジAIコンピュータが映像記録を解析し、車両の番号、進路方向、交差点での待ち時間などの情報を取得する革新的な交通監視ソリューションです。
システム要件
- 信号機の自律制御システムとして、エッジAIコンピュータ、バックエンドAI推論サーバーがシステム全体のデータフローに緻密に連携、統合されている
- エッジAIコンピュータが、IPカメラからリアルタイムで映像を取得し、AI推論を実行して映像の内容を分析
- 遠隔地にカメラを設置するため、汎用 RJ45 LANポートを介して PoE(Power-over-Ethernet)が IPカメラに電源を供給
- エッジAIコンピュータは屋外の信号機に設置されるため、低消費電力、ファンレス設計を備え、幅広い動作温度に対応する必要がある
- エッジAIコンピュータが映像を分析した後、RAWデータを中央制御室に送信。そこでバックエンドAI推論サーバーが高い処理能力を活用して膨大な推論処理を実行し、事前学習済みのディープラーニング(深層学習)モデルを活用してメタデータを分析することで、中央制御室から自律制御型信号機を管理
ソリューション
NVIDIA Jetson Tegra X2(TX2)をベースにしたAdvantechのコンパクトなモジュラー式PC「MIC-720AI」がエッジAIコンピュータとして採用されました。「MIC-720AI」は、AI推論技術を活用して、道路上で収集された膨大な映像データに基づいて交通監視を実行。対象物の追跡に使用される従来の車両認識方法をはるかに凌駕します。「MIC-720AI」は、エッジでのディープラーニング・コンピューティングの要件を満たしており、道路上で取得した交通映像のメタデータをパッケージ化して中央制御室に送信できます。また、他の交通機器と統合するための複数のインターフェースを備えています。
MIC-720AI
中央制御室の直感的なダッシュボードと統合されたAI推論サーバー「SKY-6100」は、道路上に導入されたエッジAIコンピュータ「MIC-720AI」からメタデータを受信するだけでなく、ディープラーニングモデル(深層学習)を活用してすべての交通状況を監視します。異常な状況が発生した場合は、それを認識し、信号機を適切に管理します。「SKY-6100」の分析力により、信号機の自律制御システムは、市内の交通の流れをスムーズかつ効率化します。これにより、地方自治体などの公共機関はリアルタイムで市内の交通状況を詳細に把握することができます。また、こうして収集されたデータや情報は将来の制御システムのパフォーマンスや交通インフラの状況を予測・改善するために常に必要であり、交通影響評価、公共交通機関、道路設計に関する積極的な交通計画を実施する上で非常に重要です。
SKY-6100
ソリューションの特徴
- エンドツーエンドで、データフローが緻密に設計されたAI交通監視ソリューション(信号機の自律制御システム)
- 産業用エッジAIコンピュータの導入でAIコンピューティングを実現。従来の交通状況検知システムに比べて、導入が容易
- バックエンド(中央制御室)で、ディープラーニング・コンピューティングを活用
Advantechが選ばれる理由
リアルタイムでの信号機の自律制御システムを実現するには、緻密に設計されたエンドツーエンドのデータフローが不可欠です。しかし、市場の多くの交通監視システムは、車両認識や対象物の計測に主なリソースを投入しており、ソリューションを実用化するためのRawメタデータの変換が不足しています。AdvantechはAI推論を実行するのに十分なディープラーニング(深層学習)機能を持つエッジAIコンピュータ「MIC-720AI」とAI推論サーバー「SKY-6100」を用いたエンドツーエンドソリューションを提供し、お客様のエッジコンピューティング要件にお応えします。
- NVIDIA Jetson Tegra X2(TX2)を内蔵した産業用「MIC-720AI」が、道路上でエッジAIコンピューティングを実行
- 1U型 5x GPUカード(NVIDIA®Tesla®対応)を搭載したAI推論サーバー「SKY-6100」がバックエンドで膨大なメタデータをAI分析
採用製品
MIC-720AI
- NVIDIA®Jetson™Tegra X2 256 CUDAコアを搭載したエッジAIコンピュータ
- ファンレスでコンパクトな設計
- NVIDIAJetson®Tegra X2をサポート
- 2X USB 3.0ポート、1X 内部USB 2.0
- 1X IEEE 802.3af POEポート
- Linux OS&BSP(ボードサポートパッケージ)
- 深層学習のトレーニング済みモデルをサポート
- 幅広い動作温度に対応:-20 ~ 60 °C
SKY-6100
- プロセッサ:デュアル Intel® Xeon® スケーラブル プロセッサ
- メモリ:DDR4 2666MHz ECC-REGタイプ、最大512GB
- リモート管理:IPMI機能対応
- 拡張:1X PCIe x16ダブルデッキFH/FLカード+1X PCIe x16 シングルデッキFH/HLカード または 5X PCIe x16シングルデッキ HH/HLカード対応
- 電源ユニット:80 PLUS Platinumレベル認定取得 1200W 1 + 1 冗長電源
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