TOPICSトピックス

  • ホーム>
  • トピックス>
  • 信号機制御システムへのAI実装事例/ AI画像検出で車両待ち時間を短縮

信号機制御システムへのAI実装事例/ AI画像検出で車両待ち時間を短縮

2021/04/02

信号機の固定サイクル制御による待ち時間の増加

誰もいない道で赤信号に引っかかるというのは、台湾台北市の幹線道路を夜間に運転する人にはおなじみの光景です。これは、信号機の表示が切り替わるサイクルを台北の日中のピーク時に合わせて設定しているために起こる現象です。台北の信号機は、歩行者が広い道路を安全に横断するための時間を確保するため、カウントダウンが長くなっています。日中は必要なことですが、深夜に通行する車や人にとっては負担が大きくなります。加えて、日中の交通量に合わせて表示サイクルが固定されているため、主要幹線道路ではドライバーが無駄に長時間待たされることがありました。

 

この現象を防ぎ、交通効率を高めるために、台北市は2019年に「スマートAI信号制御システム」を導入しました。輸送および計画コンサルティング会社である THI Consultants Inc.が開発したこのシステムは、監視カメラ、Advantechの産業用エッジAIコンピュータ「MIC-720」、そしてビデオ・オーディオ製品を提供するYuan High-TechのAIアルゴリズムを組み合わせたものです。実際の交通量に基づいた柔軟な信号調整を行い、交通の流れを効率化、改善します。

 

監視カメラには、車や歩行者の状況をデータとして収集するAI画像検知機能を搭載。システムが画像をリアルタイムで「MIC-720」にアップロードし、「MIC-720」がAI画像検出を行い、人や車の位置を計算します。必要に応じて、青信号を延長したり、応答信号を作動させたりして、リアルタイムに信号機を調整します。このシステムが信号機を調整するメリットは3つあります。

 

  • 幹線道路の信号が青で、交差点に歩行者や車が待機している場合、表示サイクルを最小値に調整
  • 側道の信号が青で、そこに交通量がある場合、青信号の時間を延長
  • 側道に交通量がない場合は、その青信号を無効にして、幹線道路の交通の流れを途切れさせずに、効率を最大限に高めます

 

AIの画像認識アルゴリズムの精度を確保するために、Yuan High-TechがAIのラベルやアイテムの認識能力を調整しました。この調整はシステム開発の初期段階に行われたもので、夜間や晴天時といった異なる環境・状況に対応したアルゴリズムの学習とモデルの構築を実現しました。

 

smart_traffic_bannar

AIによるスマート信号制御で183万台湾ドルのコスト削減を実現

この「スマートAI信号制御システム」は、交通の流れに応じて特定の信号を変更することができ、側道の交通には十分な通過時間を与え、側道が空いているときには幹線道路の青信号時間を長くすることができます。つまり、日中は幹線道路の交通量を増やし、夜間は赤信号の待ち時間を減らすことができるのです。

 

「スマートAI信号制御システム」の導入後に行った統計分析によって、台北の交通の待ち時間が大幅に改善されたことが判明しました。異なるタイムスパンでの車両の平均待ち時間が15〜78%減少し、夜間の幹線道路の赤信号での待ち時間が35%減少、幹線道路の青信号の表示時間が7〜79%増加し、交通の効率が上がりました。

 

赤信号の待ち時間が減れば、車のアイドリング時間やガソリン消費量も減ります。このシステムを省エネ・省炭素データに換算すると、年間約23トンの二酸化炭素排出量を削減し、年間約183万台湾ドルの経済効果が得られます。

 

台北市は、2020年に交差点を拡張しました。先進的な「スマートAI信号制御システム」を信頼性の高い正確な検出装置と組み合わせて使用することで、幹線道路の交差点における不要な待ち時間を効果的に減らし、交通効率を向上させたいと台北市は考えています。このシステムは交通渋滞を減らし、市全体のキャパシティを増やすことにつながります。

 

AdvantechのエッジAIコンピュータ MIC-720AI

データ伝送の遅延のため、「スマートAI信号制御システム」では、ハードウェアが重要な役割を果たすエッジコンピューティングを採用しています。このハードウェアは3つの基準を満たす必要があります。1つ目は、カメラに取り込まれる映像のデコードと画像処理を実行できるほど高性能であること。2つ目に、映像を正確に認識できるかどうかは環境の変化に影響されやすいため、深層学習や推論を行うための十分な処理能力を備えていること。3つ目に、日常的に街角で見られるような高温、降雨、湿度などの過酷な環境条件に耐えるだけの耐久性を備えていることです。

 

Advantechの「MIC-720AI」は、NVIDIA® Jetson™ Tegra X2を搭載しています。洗練されたファンレス設計で、画像認識モジュールを内蔵し、深層学習モデル、およびそのプロセスをサポートし、幅広い動作温度に対応しているため、エッジAIコンピューティングを必要とする屋外アプリケーションに最適です。「スマートAI信号制御システム」に統合すれば、「MIC-720AI」は優れたAIソリューションとしての真価を発揮します。


MIC-720AI

 

AdvantechのNVIDIA®製GPUを活用した産業用AI x IoTソリューションの詳細はこちら

 

 

Advantechのソリューションは、特定の業種・業態に特化された要件を満たし、優れたアフターサービスを提供します。屋外の電源や環境条件は、屋内のコントロールセンターに比べて安定していないため、頻繁に停電が発生します。従来の信号制御システムでは、停電が発生すると機能が停止し、エンジニアが現場で再起動させる必要がありました。この問題に対処するため、Advantechは電源が回復した後に自動的にデバイスを再起動する特殊な回路基板を導入することで、THI Consultants Inc.のメンテナンスエンジニアの現地作業を軽減させることに成功しました。

 

THI Consultants Inc.の副社長は、Advantechが世界的な産業用コンピュータの主要メーカーとしてエッジ・コンピューティング機器の開発に多大な資源を投入しており、今後の世界市場の発展に貢献してくれるものと期待しています。Advantechにとっても、THI Consultants Inc.は、スマートな交通システムの統合に関する豊富な経験を持っており、実用的なエッジ・コンピューティング・アプリケーションを開発する上で理想的なパートナーとなります。THI Consultants Inc.Yuan High-Tech、Advantechの3社は、今後もスマート交通システム市場の発展を目指していきます。

ソリューションの特徴
  • 車両の平均待ち時間が15~78%減少し、交通の効率化が図られました。
  • 車両のアイドリング時間とガソリン消費量の削減により、年間約183万台湾ドルの経済効果が得られました。
  • 「MIC-720AI」は、高温、降雨、湿度などの街角で見られる厳しい環境条件に耐えることができる高性能な製品です。
  • Advantechのソリューションは、特定の業種・業態に特化した要件を満たし、メンテナンスエンジニアの現地作業を軽減し、優れたアフターサービスを提供しています。
採用製品

MIC-720AI_Front left_700x550

MIC-720AI

  • NVIDIA®Jetson™Tegra X2 256 CUDAコアを搭載したエッジAIコンピュータ
  • ファンレスでコンパクトな設計
  • NVIDIAJetson®Tegra X2をサポート
  • 2X USB 3.0ポート、1X 内部USB 2.0
  • 1X IEEE 802.3af POEポート
  • Linux OS&BSP(ボードサポートパッケージ)
  • 深層学習のトレーニング済みモデルをサポート
  • 幅広い動作温度に対応:-20 ~ 60 °C

 

詳細はこちら(製品ページ)

MIC-7700_700x550

MIC-770

  • 第8世代 Intel® Core™ i CPUソケットタイプ(LGA1151)と Intel®Q370/H310チップセット
  • 幅広い動作温度範囲(-10〜50°C)
  • VGAおよびHDMI出力
  • 2 x GigaLAN、2 x USB 3.1および6 x USB 3.0
  • 2 x RS-232 / 422/485、4 x RS232シリアルポート(オプション)
  • 2.5インチHDD / SSD x 1、mSATA x 1
  • 9〜36 VDC入力電力範囲
  • 2 x LAN、絶縁COM、32ビットGPIOモジュールに対応
  • Advantech i-Modulesに対応
  • Advantech SUSIAccess &組込みソフトウェアAPIに対応

 

詳細はこちら①(本体製品)

 

詳細はこちら②(I/Oモジュール)

スマート交通システムのパートナー
content-image-1595215641636
関連動画

 

ソリューションの実現に関するお問い合わせはこちら

関連情報