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AIによる肺音モニタリング

2022/03/11
 

台湾のAIシステムインテグレータであるHeroic-Faith Medical Science(以下「HFMS」)は、アドバンテックおよびインテルと協力して、エッジAIを利用した肺音のモニタリングシステムの開発に乗り出しました。このシステムによって、看護師は病棟にいる患者の心肺の状態をナースステーションからリアルタイムで把握でき、医療の効率を大幅に向上させることができます。

 

2020年4月、COVID-19が流行した深刻な時期に、中国の武漢第9病院のICU(集中治療室)の医療スタッフは患者の治療、バイタルサイン(生命兆候)の記録のため、完全防護服を着用しました。HFMSが開発したAIによる肺音モニタリングシステムのおかげで、医療スタッフはヘッドギアを外したり、聴診器を用いて患者の肺音状態を記録する必要はなくなりました。臨床医は防護服を脱がずに、微小電気機械システム(MEMS)の集音性マイクパッチを介して患者の肺音を聞き取ることができ、交差感染のリスクを大幅に減少させることができました。


 

HFMSの創設者 Fushun Hsu氏とボードメンバー Yuan-Ren Cheng氏のインタビュー

肺音モニタリング

HFMS 創設者 Fushun Hsu氏(医師)氏のインタビュー

 

このモニタリングシステムは、挿管なしの麻酔や心肺手術、ICU(集中治療室)での肺音モニタリングにも適しています。呼吸数や異常な不定肺音などの呼吸パラメータは、重症患者の臨床治療において重要な指標ですが、そのようなパラメータを絶え間なくモニタリングする機器は従来ありませんでした。また、データが不足していることや長時間遠隔でモニタリングができないことから、決して満足のいく治療とは言えませんでした。

 

そこでHFMSはAIによる肺音モニタリングシステムを実装し、従来の聴診器の代わりに薄い聴診用パッチに貼り替えました。パッチを患者に貼付けるだけで肺音パラメータを連続的に記録できます。

 

さらに、AIアルゴリズムが患者の状態を把握し、その結果をアドバンテックの8インチ医療用タブレット「AIM-75H」などのモバイル端末に入力することで、スペクトログラムとして、端末のスピーカーから再生することも可能です。視覚と聴覚を駆使して診断することで、臨床医は異常音の特定がより容易になり、必要な時に迅速に介入することができます。

 

AIM-75H

 

ベッドサイドでのモニタリングと治療に加えて、HFMSは、アドバンテックの 医療用エッジサーバー「USM-500」、エッジAI アクセラレーションモジュール「VEGA-340」、インテル OpenVINO™ツールキットを統合し、病棟のすべての患者の肺音パラメータを同時に把握できるシステムを構築しました。これにより、看護師は病棟患者24人の呼吸の状態をナースステーションから同時に観察することができ、看護師の業務負担が軽減され、医療サービスの全体的な品質が向上しました。

USM-500

 

 

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VEGA-340

処理能力とコストのバランス

HFMSボードメンバー Yuan-Ren Cheng 氏のインタビュー

 

AIによる肺音モニタリングシステムを開発する過程で、HFMSはコンピューティング性能とコストとの適切なバランスを取るのに苦労しました。

 

HFMSは当初、製品開発の初期段階で処理能力の向上に向けてハイエンドGPUを使用。スペクトログラムを表示するために商用携帯電話を改造しました。このシステム構造はベッドサイドのケアには適用できますが、開発を進めるうちに、2つの大きな課題が浮上しました。

①コストの増加 ②商用携帯電話のリソース
モニタリングデータの量が増えると、システムに必要なGPUの処理能力も増やす必要があり、その結果、余分なコストが増加する。 商用携帯電話のシステムリソースには限界があり、1つのチャネルしかモニタリングできない。

これらの課題に取り組むために、HFMSはシステムをIntelOpenVINO™アーキテクチャに変換し、CPUを最適化することで、必要とする処理能力を補完しました。

 

ハードウェアの選定に関しては、業界での評判、カスタマイズ機能、製品の信頼性を慎重に考慮した結果、アドバンテックの「USM-500」と「VEGA-340」を選択し、トータルソリューションを開発しました。

 

システム構成

 

アドバンテックの「USM-500」は医療規格「IEC60601-1-2」を取得しており、8x Intel®Movidius™Myriad™X VPU(ビジョンプロセッシングユニット)を搭載した「VEGA-340」と組み合わせることで、非常に大きなメリットが得られます。 4つのチャネル、コアあたり毎秒0.7枚の処理能力、1枚のAIカードで合計8コアの機能がある呼吸器センサを使用することで、携帯電話を使用して画像を処理していた頃のシステムと比べると、処理能力が約2倍になりました。

 

USM-500」と「VEGA-340」は、専用の受台や電力供給システム、数個のUSBスロットなど顧客のニーズに充分に応えることができます。

 

近い将来、HFMSは、製品開発からマーケティングに至る分野において、アドバンテックおよびインテルとより密接に連携し、AIによる肺音モニタリングシステムをより多くの市場に売り出したいと考えています。私たちは医療従事者の負担を減らし、より質の高い医療サービスを社会に提供するテクノロジーを生み出していくことを目標としています。

 

―インタビューは以上です。

まとめ

AIやIoTの世界で多様なアプリケーション分野へのニーズを満たすには、アドバンテックの力だけではとても足りません。

アドバンテックはこれまで100以上のシステムインテグレータや研究機関等のパートナーと協力して、IoTの課題に取り組むCo-Creation(共創)プロジェクトを実施してきました。今後も各地域のアプリケーションに特化したパートナーとともに、AIとIoTを活用してサステナブルな社会の実現を目指します。

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