自動車製造向けロボットアーム
自動車産業では、多くの工場の製造部門で自動化されたロボットシステムが利用されています。高い積載機能と長いリーチを持った大型ロボットアームは、車体パネルのスポット溶接、フロントガラスやホイールの取付けに使用される一方、ブラケット(ボディなどの大きなパーツを取り付けるための部品)のような補助部品を溶接し、取付ける際には小型ロボットが使用されます。こうしたロボットの活用は、グローバルに展開する大規模自動車工場でよく見られるオペレーション体制です。
多くの人は、ロボットによる生産の自動化が雇用を奪うことになると懸念しますが、これらのロボットは危険な煙、高温の成形品、その他の危険な物体や状況から労働者を守り、単調な操作やシフト終了時の疲労による不注意からのヒューマンエラーを取り除いてくれます。そのため、ロボット技術を採用した自動車メーカーは、生産ラインの安全性、品質、機能面を改善し、製造の速度および精度を向上させることで、最高品質の自動車を製造する上での競争上の優位性を獲得できます。
1台の自動車を製造するには数千の部品が必要になります。その上、工場で1日に数千もの自動車を生産するとなると、製造ラインでの生産管理は極めて複雑な作業となります。メーカーは概して顧客の需要を満たすために、数年ごとに自動車モデルを変更するため、モデルチェンジの際には前モデルとは異なる部品が必要になるほか、新しいツールとプロセスを実装する必要があります。加えて、高品質な製品の生産や高スループット(売上高-真の変動費)、柔軟な生産体制、シームレスに統合された製造プロセス等を実現するためには、正確なコンピュータ制御を備えた生産計画システムが必要になります。
ある国際的な自動車メーカー(B社)の先進的な工場では、新たな自動車モデルの製造に向けて、コンパクトな高性能ファンレス組込みコンピュータであるAdvantechの「ARK-2250」が、ネットワーク化された製造システムに実装されました。この製造システムは生産ラインのQC(品質管理)改善のため、工場内において自動車に取り付ける部品の詳細情報を記録し、オペレーターに提供する役割を担います。
アプリケーション要件
B社の新規プロジェクトでは、生産ラインのプロセス制御およびライン上での部品の詳細情報表示に加え、データ取得、エッジインテリジェンス(EI)、リモート監視・管理機能などの「工場の見える化」を目指すことになりました。具体的には、制御装置がセンサーやアクチュエーターから収集したデータに基づき潜在的な問題を検出した場合、動作を自動的に終了し、アラートとアラームを作動させ、工場のオペレーターが使用するリモート管理用のコンピュータ、スマートフォン、その他のモバイルデバイスにメッセージを送信します。こうしたシステムの要件としては、エッジ上で莫大なデータを扱うための適切なコンピューティング能力、データストレージ機能を備えた制御装置、およびシステム上でIoT機能を統合するソフトウェアプラットフォームが必要になります。
また、生産ラインのオペレーターがタスク情報を容易に閲覧できるように、各ワークステーションのコンピュータには、ロボットアームモニターや複数のディスプレイを接続するための豊富なI/O、幅広い電圧サポート、動作温度対応や、自動車製造工場での過酷な環境に耐えうる堅牢性が必要になります。他にも、動作の信頼性と安定性を確保するために、電源ケーブルやLANケーブルなどのケーブル類やワイヤーをコンピュータに安全に接続しなければなりません。
ソリューション
適切な電源、LAN、HDMIインターフェースを備えたAdvantechの「ARK-2250」が、B社工場の各ワークステーションに設置されたロボットアームに統合されました。そして、コンピュータと電源、ネットワーク、監視センサー、アクチュエーターをつなぐワイヤーやケーブルが落下して動作障害や切断を引き起こさないように、それらをロックすることで、安全な接続を実現しました。
他にも、データ取得、データ表示、リモート監視制御機能を有効化するために、「ARK-2250」およびバックエンドサーバーに、Advantechのデバイスリモート管理ソフトウェアプラットフォーム「WISE-DeviceOn」がデプロイされました。
「WISE-DeviceOn」を製造システムに実装することで、生産ラインで取り付ける部品の情報を逐次入手し、それらの情報をモニターに表示して、現場のオペレーターが関連情報を即座に閲覧できるシステムが実現されます。このシステムは、今後の生産ラインの改善とシステムメンテナンスのために、データをSQLサーバーデータベースに収集・エクスポートして、製造記録を保管し、ビッグデータを集約します。
「ARK-2250」を搭載したロボットアームは、安全センサーから収集したデータに基づき問題を検出した場合、すぐに生産ラインを停止させ、欠陥製品の生成を回避し、経済的損失を削減します。また、「ARK-2250」はHDMI、VGAを搭載し(オプションでサードパーティ製ディスプレイインターフェース搭載可能)、様々なアプリケーションに柔軟に対応します。コンパクト設計(260 x 54 x 140.2 mm)で、第6世代 Intel®Core™Uシリーズ(i3 / i5 / i7)プロセッサをサポートしており、高いコンピューティング能力を提供できるため、高速で稼働する自動車の生産ラインでの使用に最適です。
Advantechのファンレス組込みコンピュータ「ARKシリーズ」は、Advantech独自の「ARKプラス拡張モジュール」と「i-Door I/Oモジュール」を組み込むことで、産業用ストレージ、および産業用インターフェースを拡張できます(オプション)。また、自動車メーカーが生産ラインを改造して新たなモデルを製造する際にも、柔軟な調整・拡張機能を備えた「ARK-2250」は最小限の追加投資で設計変更に対応できます。
リモート管理ソフトウェア 「WISE-DeviceOn」を搭載
「ARKシリーズ」には「WISE-DeviceOn」が同梱されており、ユーザーは独自の産業用制御システム、IoT、クラウドアプリケーションを開発する際に必要なソフトウェアのリソースを容易に集約・統合できます。このソフトウェアを活用して、ユーザーはデバイスのリモート監視・制御およびIoTアプリケーションの開発を容易に実行できます。また、システムインテグレータが独自プラットフォームや異種デバイス間のダッシュボードを開発するための非常に使いやすいダッシュボードビルダーも提供しています。これらを活用して、工場のオペレーターは、あらゆるブラウザーベースのコンピュータ、スマートフォン、モバイルデバイスを介して、いつでもどこからでもデータを閲覧し、生産ラインの状況を素早く把握することができます。
まとめ
- ファンレス/ワイド電圧/幅広い動作温度/ロック可能なケーブル設計で、産業用アプリケーションの信頼性と安定性を確保
- デュアルディスプレイ対応(VGA/HDMI)、オプショナルでトリプルディスプレイ対応(サードパーティ製品使用)
- 高度なコンピューティング機能と豊富なI/Oサポートにより、データの収集と分析要件に対応
- 「WISE-DeviceOn」を同梱し、簡単な接続と迅速な展開でデータ収集とリモート監視を実現
- Advantech製品とサービスの長期供給サポートあり
採用製品 ARK-2250
- 第6世代 Intel®Core™Uシリーズ(i3 / i5 / i7)
- デュアルディスプレイ(VGA + HDMI)、オプションでトリプルディスプレイ(三画面同時表示)
- ロック可能な12VDCジャック電源入力
- オールインワン・オーダーに対応した電源モジュール(9-36V)
- 幅広い動作温度 -20~60℃
- Wi-Fi/セルラー通信モジュール用 2x フルサイズ mPCIe拡張
- 1x フルサイズ mSATA、1x 2.5インチ SATAストレージデバイス
- Advantech iDoorモジュール対応
- Advantech 「ARKプラスモジュール」の2層構成サポート
ファンレス組込みコンピュータ ARKシリーズ
AdvantechのARKシリーズは、過酷な環境にも適応するファンレス設計や豊富なI/O、インターフェースの拡張機能を備え、高いコンピューティング性能を発揮できるため、幅広いアプリケーションでご利用いただけます。
Advantechについて
Advantechは、IoTインテリジェントシステムおよび組込みプラットフォームの分野でグローバルトップシェアのインダストリアル・プラットフォームメーカーです。「Enabling an Intelligent Planet(インテリジェントプラネットの実現)」をコーポレートビジョンに掲げ、近年はIoT、ビッグデータ、AIのトレンドを取り入れ、エッジインテリジェンスなWISE-PaaS AIoTプラットフォームとマーケットプレイスのインダストリアル業界向けソリューションを提供し、クライアントとビジネスパートナーとが結びつきを深め、AIoT時代の新たなビジネスをCo-Creation(共創)できるエコシステムの実現を進めています。
(ウェブサイト:www.advantech.com)
アドバンテックテクノロジーズ(ATJ)について
アドバンテックテクノロジーズ株式会社 (略称:ATJ、旧オムロン直方) は、Advantechグループの日本国内拠点として、Advantech製品の販売ならびに、医療設備、ロボット産業、設備産業などのインダストリアル向け電子機器のMade In Japan 開発・製造サービス(DMS/ODM/EMS)を提供しています。Advantechの豊富なAIoT関連製品を日本国内のお客様ニーズに合わせたカスタマイズサービスにも対応し、AI x IoT時代の新たなデザイン・イン・サービスをご提案致します。