小学校での活用事例 (ひとみるAIサーモスキャン)
AIを使って社会課題に挑戦
アドバンテックテクノロジーズ(社長 石田隆裕)と福岡県直方市(市長 大塚進弘)は共同で、社会空間として特に行政による人の集まる場所に対する新型コロナウイルスへの感染対策確立へ、より一層の加速を進めるための、「サーモスキャン・システム」や「”密”をみるシステム」など、人をみるAI技術を利用した実証実験を市内各所で実施しています。
人をみるAI技術による課題解決
AI技術は社会空間の様々なシーンで活用されており、生活の安心や仕事の効率化など、AIと共に暮らす社会はますます当たり前化してゆきます。AdvantechのAIソリューションは、物体・人物・情報など様々なものをAIで処理する為のプラットフォーム群を提供しています。今回は直方市内の市立小学校から2校、上頓野小学校と中泉小学校にご協力を頂き、”人”をみるAI技術 「ひとみるAI サーモスキャン」の実証実験を通じて以下の確認と運用ノウハウの蓄積が進められました。
小学校での実証実験:確認ポイント
- 夏場の小学生(6歳~11歳) 体温傾向
- つばの深い帽子+マスク+身長差
- 登校ラッシュ時・行動制限しない状況
- 教職員の負担軽減に向けた運用ノウハウ
- 設置場所、各種機能設定の最適化
「ひとみるAI サーモスキャン」を学校で活用
小学校の朝。
短い時間の中で、多くの児童が元気よく登校してきます。
直方市の小学校では、家庭での検温を基本として、登校時に児童が持ち寄った検温記録用紙(健康チェック表)を教職員が目視確認し、必要により個別の検温を実施。更にマスクの着用指導などを行っています。教職員は授業前のあわただしい準備に加え、この管理作業が加わる事で負荷増の状況が常態化しています。児童の健康・安全に対して責任のある立場から、この作業は決して怠る事は出来ません。
また、元気の良い児童達も、友達同士、グループで登校する子もいますし、ついつい元気があまって校内を走ってしまう子、一度教室に入った後に始業前に運動場で遊ぶ子、花壇に水を与える子など、児童たちの朝には多様な行動があります。その中での検温対応についても、一方通行・順番での行動抑制はとても難しい運用となっているのが実情です。
このようなあわただしい朝において、今回の実証実験では、児童の行動に一切の制約を入れずに「ひとみるAI サーモスキャン」を設置しました。
実証事例(動画)
動画:直方市立 上頓野小学校での実証の様子
動画:直方市立 中泉小学校での実証の様子
サーモグラフカメラの設置と導線設定が重要
このシステムは、サーモグラフカメラに映る複数の人物を瞬時に捉え検温し、同時に履歴を記録できるため、多くの児童が一斉に通過しても教職員はそのモニタ画面や案内音(高温やマスク着用)、更には履歴を見直す事で、児童たちの状態を把握・点検する事ができます。システムの確実な性能を発揮するためには、サーモグラフカメラの設置レイアウトが重要で、環境と撮影対象に合わせた調整が必要となります。
カメラ設置上の注意点
- 主な撮影対象に合わせた高さの設定 (身長差の想定)
- 外から入ってきた直後で検出・検温しない (特に夏季)
- カメラから見て、人が重ならないような位置
- 特に日差しの強い夏季は、直射日光が撮影対象人物に当たらないようにする
これらの注意点を設置場所で工夫する事で、児童たちの身長差や、つばの深い帽子やマスク着用していても、サーモスキャンが瞬時・的確に顔を検出し、額の温度を検温する事が可能となります。
学校での活用シーン
学校の中では、登校時以外にも、サーモスキャン・システムの活用シーンが想定されるとの事です。
- 登校時の状態把握
- 昼休み時点での点検 (変化の早期把握)
- 下校時の児童たちの検温履歴の確保
- 保護者懇談会や参観日・各種イベントなど児童以外が集まる場合
- 不審者の検知・記録
今後に向けて
実証実験段階では、カメラを三脚にて設置稼働しています。元気な児童たちが動き回る学校内においては、この設置形態は、児童たちの怪我防止と、機器破損のリスクがあるため、頭上設置や壁面固定等の運用も検討事項となります。 ただし、学校では、イベントに合わせた可搬性の確保も必要であり(例: 体育館など)、運用方法を今後検討・改善進めていく事が求められます。
また、今回の直方市 上頓野小学校と中泉小学校では、幸い児童達の教室への移動経路(導線)が1つであったため、カメラは1つで問題ありませんでしたが、複数の昇降口を持っている学校においては、カメラの複数設置などの検討も必要となってきます。
直方市立 上頓野小学校 手島文子校長コメント
当校の児童数は492名で、朝の登校時は大変込み合う状況です。そのような中で、今回の実証実験は、私共が思っていた以上にスムーズに進みました。登校の児童と運動場で遊んで戻ってくる児童達が混在・混乱する状況は、システムでも対応難しいと考えていましたが、全く問題なく全ての児童のチェックを行う事が出来ました。私どもの確認が追い付かない状況においても、システムがしっかりと履歴を記録しており、簡単に後追いができるのもとても助かります。
「体温を確認する」対応を加えた児童の健康チェックが毎日欠かせない状況において、関わる教職員の朝の負担は当校だけでなく、どの学校も問題視されている状況ですし、このままでは今後すぐに解決する事は出来ないと思われます。このシステムが利用できれば、問題は大きく解決でき、児童の確認と職員の負担軽減と両立させることが可能です。
また、このシステムは日常の中で児童達以外の方の来校者の履歴も把握可能で、セキュリティ用途にも活用できると思いました。 授業参観等の保護者が集まる場所にも是非使いたいシステムです。 |
直方市立 中泉小学校 長谷川順一校長コメント
実証実験にあたっては、帽子をかぶって顔が少ししか見えない児童や、動きが想定できない状況などで、うまく動くのか、トラブルなども想定していましたが、まったく問題なく利用できました。 このシステムは非常に機敏で感度が良く、全ての登校児童の様子を自動で確認する事ができ、その結果はその場でモニタ上からできますし、履歴で後からの確認も簡単にできるので、校内で日常的にこのシステムが設置・運用される事の意義を感じました。
現状は、朝の登校時だけでも児童の検温確認・マスク点検に1時間以上かかっている状況です。 このシステムを利用しますと、その時間が大きく削減され、更には後から履歴を確認して、細やかな児童の様子の確認やケアも可能になります。また、児童以外の来校など、簡易的なセキュリティシステムとしても利用できます。
設置・案内(通知)の方法などいくつかの改善アイデアも直方市とアドバンテックテクノロジーズ様に提案させて頂きました。研究開発を引き続き進めていただき、社会が求めるよりよい製品を実現いただける事を願っております。 |
*本コンテンツに掲載されている個人の写真・動画は、直方市ならび学校の承諾を得て撮影掲載しています。この素材の無断転用を禁止します。