IPカメラへのAI実装事例/ 誤ったアラートを最小限に抑え、リアルタイムの警告を通知
個人宅や企業の敷地内に設置される防犯カメラの多くは、周辺の活動を映像として記録し、エビデンスを提供してくれますが、撮影対象に関するリアルタイムの分析結果を提供することはできません。自身の資産をより適切に保護するには、カメラだけでなくセキュリティシステムも導入し、正確なイベントトリガーとリアルタイムのアラーム通知を使用して防犯効率を高める必要があります。 また、従来の標準的なセキュリティシステムでは、夜中にカメラの周りをうろつく野良動物を検知して誤ったアラームを出してしまったり、周辺環境の如何を問わずに24時間年中無休で正常な動作を維持できる高品質なセンサーを用意できないという問題も抱えています。
しかし、自身が持つコンシューマー向けカメラを使用して、リアルタイムでタイムスタンプ(ファイルやデータの属性の一つとして付与・保管される日時情報)や写真付きアラート、イベントの通知を受け取ることができるとしたら...。そして、これが本当の脅威なのか誤警報なのかをシステムが識別し、それらのイベントを証拠として記録できるとしたらどうでしょうか。
「エッジAIセキュリティシステム」を導入することで、カメラからのライブ映像をネットワークエッジでリアルタイムに分析し、重要なセキュリティ上の意思決定につなげることができます。トリガーされたイベントが本当の侵入なのか、それとも単なる誤報なのかを検出し、録画したビデオや写真を使って携帯電話へ通知を直接、かつ即座に送信することができます。何よりも、セキュリティシステムの導入に追加費用がかからず、センサー機器の高額な設置料金や高いメンテナンス費用もかかりません。このIPカメラベースの「エッジAIセキュリティシステム」は、今お使いの防犯カメラをそのまま活用して防犯効率を高められます。
システム要件
「エッジAIセキュリティシステム」は、シンプルで標準的かつ安価なセキュリティ監視機器やシステムを、特殊なAIが動作するスマートなセキュリティシステムとして有効活用したいという市場のニーズに応えるために開発されました。システムの開発を依頼されたイスラエルのシステム・インテグレータ(B社)は、個人のセキュリティ強化だけでなく、誤ったアラートを最小限に抑え、リアルタイムの警告アラートを送信する、信頼性の高い低コストのセキュリティ監視システムをエンドユーザー向けに提供することを目指していました。
システム概要
この「エッジAIセキュリティシステム」は以下の4つの層で構成されています。
第1層:4台のコンシューマー向けIPカメラがエッジAIコンピュータへ映像データを送信 第2層:AdvantechのエッジAIコンピュータ「MIC-710AI」(この事例ではB社が開発したソフトウェアを搭載)が、リアルタイムで映像フレームを処理し、映像解析を実行。不審なターゲットを検出 第3層:イベントが発生すると、ユーザーへの警告アラートをコンパイルするために必要なすべてのデータをWebサーバー/ データベースが受信 第4層:モバイルアプリケーションを介してユーザー側に警告アラートを送信 |
ソリューション
第1層、第2層のデバイス(IPカメラ、MIC-710AI)は、同じネットワーク間で動作します。RTSP(Real Time Streaming Protocol:TCP / IPネットワーク上で音声や動画などのストリーミング伝送を行うための制御データの送受信をするプロトコルの一つ 。IT用語辞典参照)の配信データが、IPカメラから「MIC-710AI(NVIDIA Jetson Nano搭載)」へ送信され、内蔵の映像解析ソフトウェア(B社開発)がディープ・ニューラル・ネットワーク処理を実行。撮影対象物の不審な動きを検出します。「MIC-710AI」に搭載されたNVIDIAの高速化技術により、高度に洗練されたソフトウェア・パイプラインを構成でき、4台のカメラのライブ映像をリアルタイムで同時処理することが可能となります。
システムのクラウド部分(Webサーバー/ データベース)は、エッジのカメラから送信されたすべての通知を保存し、実行するための手段を提供します。この第3層にはウェブサイトもあり、クライアントはここでシステムへのユーザー追加、カメラのセットアップ、関心領域(ROI)のクローズアップ・スキャンなどを選択できます。第4層では、主要な機能に加えて、より詳細な定義設定から、各カメラの通知動作(動きの検出、顔認識、光感度、イベントスケジュールなど)を微調整できます。
Advantechソリューションの強み
Advantechは、最新の「エッジAIセキュリティシステム」を構築するために必要な製品パッケージ(ソリューション)をイスラエルのB社に提供しました。B社は、ハードウェアの製造や組込みモジュールの選定をAdvantechに一任することで、コスト削減、品質保証、ソフトウェアの開発にリソースを集中することができました。
- 国際規格に準拠した高品質な製品、安定した生産・供給
- システムの高い信頼性(実地試験実施済み)
- 製品販売後の保証と優れた技術的アフターサービス
採用製品
MIC-710AI
- CPU:クアッドコア ARM Cortex A57 (最大動作周波数: 1.43GHz)
- GPU Maxwell GPU, 128 CUDA コア, 最大512 GFLOPS (FP16) (最大周波数: 921MHz)
- メモリ:4GB LPDDR4
- フラッシュ 16G(eMMC)
- ファンレス・コンパクト設計
- NVIDIA Jetson® NANO 搭載
- 2 x LANポート
- BSPを搭載したLinuxOS(ボードサポートパッケージ)
- ディープラーニングのトレーニング済みモデルをサポート
- 幅広い動作温度範囲:-10℃~60℃
- 1x miniPCIE および 1x M.2 (NVMe) 対応
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