繊維欠陥検査用ロボットアームのAI実装事例/AI推論で欠陥素材を迅速に特定・修正
プロジェクトの背景
産業界の発展ペースが加速する中、台湾の伝統的な繊維産業は、世界的なファストファッションのトレンドに乗る機会を探っています。織物メーカーや生地工場がこのトレンドに上手く乗り、市場への参入を早めるには、製造スパンを加速させる必要があります。従来の繊維産業では、設計、選定、紡績、織布、染色、仕上げの各工程で、多くのリソースと時間を消費してきました。例えば、適切な種類の生地や品質の高い素材を手作業で見極めるには、数日から数週間かかる上に、素材に欠陥があった場合、試作から量産への段階、そしてお客様への納品までのプロセス全体が深刻に停滞する恐れがあります。
しかし今、人工知能(AI)の発展がこの状況を大きく変えようとしています。ロボットアームにスマートな AI モデルを実装すれば、繊維や生地のパターン検査のようなマニュアル作業を減らし、多くの自動化プロセスを高速に処理できます。さらに、繊維製品の製造工程を数週間から数日、さらには数時間にまで大幅に短縮できるため、繊維産業全体に根本的な変化をもたらすことができます。
システム要件
このシステムでは、AI搭載ロボットアームの導入、およびエッジでの様々な要件を満たすための拡張性と柔軟性を備えた分散コンピューティングが必要になります。システムの流れとして、まず生産ラインに設置されたすべての産業用カメラから自動光学検査管理用コンピュータにRaw画像が取り込まれ、画像処理が施された後に、エッジAI搭載コンピュータに画像を送信され、そこで繊維画像の欠陥検査が実行されます。使用される産業用カメラは、高スループットの GigEカメラ (Power over Ethernet【PoE】を使用してデータケーブル経由で電源を供給するカメラ)で、 GenICam 規格(欧州のマシンビジョン規格団体であるEMVAが策定したソフトウェアインターフェースの規格)で動作します。
検査管理用コンピュータは、Raw画像のコントラスト調整、較正、切り分けなどの処理を並行して行うため、高い処理能力が必要となります。処理された画像はエッジAI搭載コンピュータに送られ、このコンピュータがAI 推論を実行し、メタデータの結果を検査管理用コンピュータに返します。欠陥が認識されると、検査管理用コンピュータがロボットアームを制御して、欠陥のある素材を特定し、修正します。繊維や素材の種類が多く、起こりうる欠陥の種類も多いため、それらの種類に対応する AI モデルを検査管理用コンピュータに指定、展開しなければなりません。
システムの詳細
検査管理用コンピュータ MIC-770
検査管理用コンピュータはRaw画像をAI推論に適した画像にする処理を実行するため、分散コンピューティングシステムの中でも特に重要な役割を果たしており、強力なコンピューティング能力が必要です。この画像処理機能が優れていれば、エッジAIの作業負荷を大幅に軽減でき、AI推論の精度を高めることができます。このコンピュータにはMIC-770(第8世代インテル® Core™ i CPU に対応)が採用されました。MIC-770は、拡張 i-Module を介して GigE PoE カードを統合する柔軟性を備えており、接続する他のエッジ AIコンピュータを処理できるコンピュータとして、あらゆるコンピューティング要件を満たします。
エッジAIコンピュータ MIC-730AI
AI の推論には高度な計算が必要であり、計算を高速化するためには GPU を用いたコンピュータが必要となります。このコンピュータにはMIC-730AIが採用されました。MIC-730AI は、NVIDIA® Jetson AGX Xavier™ GPU を搭載し、エッジ AIコンピュータとして機能します。Jetson Xavier™ の優れた処理能力により、高精度の繊維製品をより高速かつ正確に自動検査することができます。AI の推論技術を用いた繊維製品の欠陥検査では、微妙な欠陥を効率的に発見し、高品質な製品を確保することができるため、検査管理用コンピュータによって自動制御されたロボットアームは、良品と不良品の両方を正確にピックアップして取り除けます。
MIC-770およびMIC-730AIを活用した分散型 AI搭載ロボットアームソリューションにより、繊維メーカーや織物工場は、歩留まり率をリアルタイムで監視・管理できるようになりました。
Advantechは、NVIDIAの多数のプラットフォームをサポートしており、さらにリモートデバイス管理機能を備えた産業用AIシステムを提供しています。
*AdvantechはNVIDIAパートナーネットワーク (NPN)の「Elite Partner」です。
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Advantechソリューションの特徴
- AI推論を活用した産業用エッジAIコンピュータ
- ハイコンピューティングな検査管理用コンピュータ
- 高い拡張性と柔軟性を備えた分散型 AI 搭載ロボットアーム
採用製品
MIC-730AI
- NVIDIA Jetson™ Xavier 搭載
- ファンレス・コンパクト設計
- 1X MiniPCIe & 1X M.2 (PCIex4 NVMe) 対応
- Linux Ubuntu 18.04 プリインストール済
- NVIDIA JetpackおよびDeepStream SDK 対応
- iDoor、iModule、PCIeアドオンカード対応
- Allxonによる24時間365日のセキュアなリモート監視、制御、OTA展開を対応 (JetPack 4.4GA以上をサポート)
- マシンビジョン、ロボット、医療用画像アプリケーション に最適
MIC-770
- 第8世代 Intel® Core™ i CPUソケットタイプ(LGA1151)と Intel®Q370/H310チップセット
- 幅広い動作温度範囲(-10〜50°C)
- VGAおよびHDMI出力
- 2 x GigaLAN、2 x USB 3.1および6 x USB 3.0
- 2 x RS-232 / 422/485、4 x RS232シリアルポート(オプション)
- 2.5インチHDD / SSD x 1、mSATA x 1
- 9〜36 VDC入力電力範囲
- 2 x LAN、絶縁COM、32ビットGPIOモジュールに対応
- Advantech i-Modulesに対応
- Advantech SUSIAccess &組込みソフトウェアAPIに対応
Advantechが選ばれる理由
Advantechの MIC-770 と MIC-730AIは繊維メーカーや生地工場が AI のトレンドに対応できるように設計されており、様々な環境でのエッジ AI コンピューティングに対応します。Advantechはこうしたエッジコンピューティングと AI 推論システムを統合したAI 推論ソリューションを提供し、お客様の課題解決をサポートします。
AI IEM パートナー企業について
Smasoft:産業オートメーションに特化したソフトウェア開発会社。ユーザーに新たな視点を提供し、パートナー企業にはマルチプラットフォームでの成長をサポートするなど、多様なアプリケーションへアプローチすることで、産業オートメーションのソフトウェアモデルに革命をもたらしました。(HP: https://smasoft-tech.com/en/) |
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